著者が京都大学総合人間学部で行った「ミステリー研究」という講義を発展させて新書にまとめたもの。ミステリー(探偵小説)は人間学でもあるという観点から探偵小説を書いた英国の作家を各章で取り上げています。ジェイン・オースティン研究者でもある著者が取り上げた作家は、ディケンズ、コリンズ、ドイル、チェスタトン、クリスティー。黎明期のポーやガボリオにも触れています。人間学としての小説を論じるという観点から、作品の真相にふれています。そのお蔭で作品の構造や作者の意図について具体的に論じることが可能になっています。ネタばらしをしないという制約があって、ミステリーの犯罪の罪と罰、登場人物の人間性の悪や闇を分析する論考は、あまり目にしていなかったので、新鮮でした。ディケンズ、チェスタトン、クリスティーの章を特に興味深く読みました。「ブラウン神父」や「マープルもの」に対する愛着が感じられました。
終章で、クリスティー以後の「人間学」の系譜のミステリー作家に少しずつふれています。デュ・モーリア、レンデル、デクスター、P.D.ジェイムズ、バーナード、ヒル、ウィングフィールドです。欲をいえば、ジョイス・ポーター、ピーター・ラヴゼイ、ディック・フランシスも加えて欲しかった。