翻訳を心待ちにしていた本。「世界一おバカな犬」のキャプションがついたラブラドールのマーリーと暮らした13年間を綴ったエッセイだ。
新婚間もない著者夫妻が「子育ての予行演習」と称して迎え入れたマーリーはとんでもない犬。ご陽気、お気楽、元気のかたまり、尽きることのないエネルギー。もはや制御不能だ。しかも病的な雷恐怖症まで持っている。なんでもかんでも飲み込んでしまうし、齧ったり掘ったりしてダメにされた家具や、突き破った網戸は数知れず、頼みの綱の服従訓練教室からも「もう来ないで」と言われる始末。人や犬を見れば嬉しくて飼い主をひきずってでも飛びついていき、ヨダレとキスの嵐をおみまいする。
しかし誰にも負けないマーリーの美点は忠誠心。3人の子供を授かった夫妻にとってマーリーは子供たちの守護神でもあった。
犬は年齢とともに性格も落ち着いてくるとはよく言われるが、例外もあるわけで、マーリーはまさにそれ。有り余るエネルギーでマーリーが繰り広げる漫画のようなドタバタに大笑いした。普通なら音を上げて放り出してしまう飼い主も多いと思うが、そんなバカっぷりの中にも著者は犬が人に注ぐ無償の愛を痛いほど感じていたからこそ、最後の最後まで大切な家族の一員として愛し続けた。
マーリーが教えてくれたのは、変わらぬ情熱と好奇心を持ち続けること、速度を落とさず過去を振り返ることなく生きること、そして愛し愛されることの素晴らしさ。終盤で大泣きし、まさに泣き笑いの1冊。読んで損はありません。