サイズは小さいけれど(字のポイントも小さいのでおじさんには辛いかも)圧倒的な情報量と刺激的な論点に満ちた非常にすぐれた評伝。これでこの価格は安すぎるとしか言いようがありません。妻アルマとの葛藤の分析は実に説得力があり、作品分析も見事(2番と8番を外しているのには拍手。10番を9番に匹敵する傑作とするのもまったく同感。アドルノのマーラー解釈の方向性を受け継いでいるのも納得)。ただし、後書きにもあるように初心者にはちょっときついかも。またユダヤ教会には洗礼はないこと(著者が知らないはずはないのだけれども)など、文章に勢いがあるので、レトリックなのか事実誤認なのかきわどいところもあったりしますが、全体としては文句なしにマーラーファン必携です。ファンならこれを肴に何回も飲めます。もう少しユダヤ的背景にアクセントがあれば五つ星です。