私は当時からインバルといえば「暗い」というイメージが強かった。曲の病的な傾向や深刻さを強調してネトネトと攻めてくるような感じ。それがマーラーのような曲には合っていると,思っていた。なので、この7番も「夜の歌」という表題に代表される不安感、焦燥感を暗く表現した演奏と思っていたのだ。発売当時CDを聴いたときもそんな演奏だったと記憶している。
今回聴き直す前も多分そんな感じだろうと思っていたが、そうでもなかった。案外骨太で推進力があり、立派な演奏だ。ことさら曲の病的な面を強調することもなく、適度に暗さも感じられて絶妙なバランスの上に立った演奏だった。
マーラーの交響曲の中で最も人気がないのがこの7番らしく、「7番はマーラーの交響曲の中のシンデレラである」「初演の時誰もこの曲を理解できなかった」等の言葉が示すように、初演当時からあまり人気のある曲ではなかったようだ。その最大の悩みの種がやけに明るいフィナーレ第5楽章だ。それまでの暗い森の中で妖怪が百鬼夜行するような音楽から、突然ハ長調の堂々としたファンファーレが鳴り響き、印象が180度変わってしまう。この楽章をどう解釈するかで評論家たちは悩み続けてきたらしい。「失敗作だ」「何かのパロディーだ」と色んな解釈が飛び交ったようだ。
しかし素人ファンの私にはあまり関係ないだろう。突然明るくなってもいいではないか。インバルの演奏で聴くと、この5楽章はテンポが速い。何か「急げ、急げ」と急かされているようだ。その効果もあってこのフィナーレは堂々とした明るさを通り越して、バカバカしい乱痴気騒ぎに聴こえる。妖怪でも化物でも何でもありの躁状態。とにかく歌え、踊れ、騒いだもん勝ちだと叫んでいるようだ。インバルはこのパカ騒ぎを極限まで盛り上がげて曲を締めくくった。うむ、爽快である。