CBSが、80才近い引退したワルターをもう一度スタジオに招き、ステレオ録音した曲が、多くの人にワルターのイメージを植え付けてしまった。リハーサルでもトスカニーニやフリッツ・ライナーのような、権力者的なイメージではなく、楽員が何とか巨匠の思い描く音楽を演奏するように、自然と誘導する、当時としては、「優しい」指揮者というイメージがあり、その音楽も優しい音楽、というように感じていた。
しか〜し、私は、今更ながらこれを聴き、間違っていた事を実感した。そう、指揮ぶりとその結果としての音楽は別物だったのだ。ステレオ録音しか聴かずに、一方的にワルターのイメージを勝手に自分の中に作っていた。大間違いだった事は、この1947年2月10日のライブ録音を聴き、明確に認識した。ここで聴ける第5番は、感情の起伏が激しく、あの「アダージェット」が7分35秒で演奏され、全曲で61分しかない!現在聴かれる多くの指揮者の録音は70分が標準なのに、この演奏の振幅の激しさには、ただただ圧倒される。第1楽章のトランペットから始まる「葬送行進曲」がこれ程までに悲しく演奏された録音を未だに聴いた事がない。「アダージェット」は、60年代のブーレーズがBBCとの放送録音で7分台だったものを聴いた時、「こんな早い演奏は他に無い!」と思っていたのだが、そのブーレーズさえ色あせる。しかも、ブーレーズのような「早さ」を聴き手に感じさせないのである!
私は今まで何を聴いて来たのだろう?もっと早くこれを聴くべきだったのだ!
ライナーノーツに当時のプロデューサー、デニス・ルーニーの解説で、録音は、16インチ、33 1/3回転のラッカー盤にダイレクトカッティングされ、それを当時の標準78回転SPに移し替えられて発売された。後のLPや最初のCDは、そのラッカーマスターのテープコピー(つまり、2世代目)から製作された。しかし、今回、ラッカーマスターからダイレクトに20ビットリマスターした、と記載されている通り、モノラルながら、低音の迫力、中高音もヒスノイズ無く、さすがに高音ののびは、もう一つであるが、非常に綺麗な音で聴けるため、60年位前の録音とは思えない!同じ1947年のフルトヴェングラー復帰コンサートのもやもやとした音とは格段に明瞭である。フルヴェンが好きな人なら、この録音に文句の付けようが無いだろう。同じく1952年のバイロイトでの第9番の音も、これには遙かに及ばない!
マーラーファンなら、是非聴いておくべきCDである。「目から鱗が落ちる」とは、このような録音のためにあったのだ。反省します!
今までの自分なりの基準を改めなければならない!引退前のワルターは凄い指揮者だったのだ。コロンビア交響楽団とのステレオ録音は、お蔵入りにして、ニューヨークフィルやウィーンフィルとのモノラル録音を目下の目標にしよう!凄い!晩年のバーンスタインとも違う凄さに興奮する1枚です!