ふわふわした少女漫画風のタッチながら、描かれている内容はかなり深いです。
私のように「百合」に幻想的な憧憬を持ち、百合姫コミックスは癒やしとして読んでいる層はジャケ買いしてしょんぼりするかもしれません。
内容はドラマティックかつ心理描写が上手く、また「百合」の定義の限界ラインに挑むような要素も多々見られます。
当事者として「まさかこれを取り扱うとは」と思ったのが、性同一性障害でMtF(男性に産まれたけど、本人の認識は女性)でありつつ「恋愛対象も女性」いう事例。これを「百合」と呼べるかは当事者としてすら何とも言い難い、議論の別れるところですが、本作ではそれを上手く描ききって気持ちよく終わらせています。
読み物・作品としては間違い無く一級品の珠玉の短編集。客観的には満点なのですが、作中で「完全無欠のハッピーエンド以外は認めない!」と息巻いた女の子のように、個人的に「幻想」と「癒し」のみを求めて買っている百合物件としては「予想外」が強すぎ、★3にしておきます。
余談ですが、登場人物の性別(心の性別も)全てひっくり返した「ボーイズラブ」作品として読んでいたら、もともと自分には馴染みのない世界であるが故に★満点を付けたことでしょう。
以上より、タイトルにも書きましたがむしろ百合門外漢・あるいは百合愛好家ならば幅広い許容スペースを持つ玄人向けの作品ではないかなと思いました。