コニー・ウィリスの短編作品を日本オリジナルで編んだもの。
編・訳は大森望。
ウィリスの小説の特徴として、人の話を聞かない登場人物と、
嫌味を感じない程度のペダントリーが上げられると思うが、
特に短編ではそれが際立っているように感じる。
登場人物も、主要男女を軸に展開されており、
正直なところ物語の区別がつきにくい。
この短編集はウィリス本人ではなく第三者によって編まれているから、
短編作家としてのウィリスについてどう評価したらいいか正直わからなかった。
ただ、ちょっと損をしてるような気がする。
初めてウィリスを読む人がこの本を手に取ったとしたら、
それはもしかしたら、すごーくすごーく損なことかもしれない。
余計な心配かもしれないけど。
ただ、この収録5編のうちのラスト「インサイダー疑惑」には度肝を抜かれた。
そもそもSFとは、ありえない出来事を描く「空想の文学」だ。
その空想の世界と、眉唾物とされるスピリチュアルものを合体させてしまった
この作品、出すところに出したら大議論になるのではないだろうか。
読者の立ち居地も試される作品、短編ながらかなりの手ごたえを感じた。
それから、もうこれはホントに毎回思うのだけど、大森さんの言葉使い、
特に女性言葉は、今回もすこぶる上手い。
翻訳モノも創作も含め、これまで読んできたあらゆる分野の文章で、
大森さんほどの表現力を持ったモノを読んだことがない。
世代や性格も書き分けるこの手腕、今回も冴えまくっている。
ウィリスを大森訳で読めるのは、日本人の特権と言っていいと思う。