ある日、何の前触れもなく、火星人の乗る大量の円盤が地球に向っていることがわ
かる。アメリカ合衆国のデイル大統領(ジャック・ニコルソン)は、各界の関係者と
の協議の末、友好的に、火星人を地球に迎え入れる決定を下すが…。
冒頭、火の付いた牛の大群の疾走(この件に関するエンド・クレジットも笑わせる!)
という目の覚めるようなイメージに始まり、何機ものレトロチックな円盤が機体を回
転させながら地球を目指すシーンからして(そして、毒々しく安っぽいデザインのタ
イトル“Mars Attacks!”が被さる)、『
世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す(1枚組)モノクロ&カラーライズ版 [DVD]』(56)
やエド・ウッド作品といった数々の「50年代空想科学映画」へのノスタルジアが伝わっ
てくる。それから繰り広げられる、目の覚めるような特異なバートンの映画的イメー
ジの連続にはただただ脱帽するしかない。「地球なんか滅べばいいんだ!」という
ような、ルーカス・ハース演じるネクラ少年の暗い破壊願望を実現してしまったか
のような作品だ。『
ビートルジュース 20周年記念版 [Blu-ray]』、『
バットマン [Blu-ray]』
と立て続けにヒットを飛ばしワーナーに多大な貢献していたとはいえ、これだけの
個人的趣味の(作家性の強い)大作に製作許可を出したワーナーも大した度胸である。
ここにあるのは、ひたすら破壊と殺戮の一大ショウ。それをバートン流のユーモアたっ
ぷりに描いてはいるのだが、人によっては不謹慎と感じ、受け入れがたいかもしれない。
しかし、すべてが破壊されてしまった後、何とも言えないカタルシスが感じられる不思
議さはどうだろう!豪華ハリウッド・スターたちが大挙して出演しているのがすごい(そ
れもただ殺される役のためだけに!)。そんな中、愛情をこめて描いている地球人が、ネ
クラ少年ルーカス・ハース(バートン少年の分身?)、大統領の反抗的で無気力な娘ナタ
リー・ポートマン、ヨーデル好きの頭のネジが緩んだおばあちゃんシルヴィア・シドニー
だというあたりに、バートンらしいやさしさが表れている。とくに、シルヴィア・シドニー
の出演は、映画的事件と言っても決して大げさではないだろう。すでに、バートンの作品
では、『ビートル・ジュース』に出演済みだが、映画ファンであれば、86才の彼女が画面
に現れる…ただ、それだけで涙せずにはいられないはずだ。
満を持して、今回Blu-ray化されただけあって、画質・音質は素晴らしいの一言。表現力
の細やかさ、色彩の豊かさは、当たり前とは言え、既発売のDVDをはるかに凌駕している。
ただし、特典が一切収録されていないのは残念だ。これだけディテールに凝った作品なの
で、是非ともバートンや豪華出演陣のコメンタリーやインタビュー映像が欲しかった。