小渕内閣のとき戦略経済会議の委員長に,アサヒビールの樋口廣太郎会長が選ばれた。20年以上もシェアを下げ続けたアサヒビールをマーケティングで再生させたからである。今,マーケティングは政治の中にも必要なのである。しかし,他方で,政府機関は所得税の免除水準を引き下げる,消費税率を引き上げるべきだと進言している。この難しい状況の中で,企業はマーケティングをどう展開して行くべきか,著者はその解決策として,これまでの操作型マーケティングに加えて協働型マーケティングを展開すべきだと主張する。
本書は,はしがきで,これまでのマーケティングを操作型ととらえ,これからのマーケティングは協働型でなければならないといっている。操作型マーケティングとは売り手の買い手に対する情報格差の大きいときに有効であるが,これからは企業と生活者との情報格差が縮小して,売り手と買い手の協働によって製品の価値が創造されるというのだ。この協働型マーケティングとは,ディジタル・ネットワークによるコミュニケーションが有効かつ効率的に作動するから台頭してくるというのである。
だからといって,すべてのマーケティングが協働型になるというのでなく,これまでの操作型マーケティングと協働型マーケティングが併存するというのである。著者が師と仰ぐ田島義博氏や林周二氏らが1960年代に主張した流通革命論では,問屋が消えて,メーカーは直接小売店に商品を持ち込むという主張が入っていたが,問屋と小売のルートが消えたわけではない。この点,協働型マーケティングの主張は現実を踏まえているといえる。
働型マーケティングの例として「手作りの豆腐屋」とか「条件適応・クラブ型」などから,より大きな規模で「条件適応・オープン型」まで主張している。ただ本書ではこの協働型マーケティング展開のプロセスの具体例をあげて述べていないので,応用するときに難しいのではないか。
一方で,本書は現在のマーケティング展開の諸要素,プロモーション,流通・価格,品質戦略についても多くのページを割いている。この点は,タイトルの「マーケティング戦略論」のとおりである。 (東京経済大学 コミュニケーション学部 教授 八巻 俊雄)
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本書は、企業と生活者の「情報格差」をキーワードに2つのマーケティングを提示している。すなわち、情報格差が大なるもとでは「操作型マーケティング」(これまでのマーケティング)が展開され、情報格差が小なるもとでは「協働型マーケティング」(新しいマーケティング)が展開される、と主張。そして、両者は、今後共存の道を歩むという極めて現実的な主張をするのである。本書は、しかし、「協働型マーケティング」という新しいマーケティングを提案しているがそのほとんどはこれまでの「操作型マーケティング」その本質と分析をもとにした実践理論の構築に向けられており、「協働型マーケティング」はその大きな枠組を提示するに留まっている。
本書は、その操作型マーケティングに包含される重要なテーマ
●消費(者)の分析
●マーケティングの根拠
●製品についてと製品戦略
●ブランドについてとブランド戦略
●価格についてと価格戦略
●コミュニケーションについてとコミュニケーション戦略
●流通についてとチャネル戦略
●市場と競争についてと競争戦略
これらの個別的なテーマを統合するものとして
●マーケティングマネジメントとターゲットマーケティング
●戦略市場計画論
●ソーシャルマーケティング
にほとんど触れており、著者なりの角?から分析され、新しい発見がなされている。
操作型マーケティングの本質・その構図・実践と結びつく理論の模索ということを意識しており、産学両方にとってインパクトのある書であるといえる。
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