昨年渋谷の本店でスパン・ハウジングという住宅プロジェクトの展示がありましたが、服飾デザイナーがファッション小物やインテリア雑貨のみならず、家具や住宅をも視野に取り込むのは珍しいのではないでしょうか。
彼女は01年に念願のセカンドハウスを手に入れ、同時期に本国の旗艦店を新しくオープンし、ブランドロゴも一新しましたが、その背景には英国モダンデザインの魅力を再発見したことがあったようです。もっとも幼い頃に影響を受けた叔父さんが建築家だったことや、自国のデザイン・プロダクトに囲まれて育ったということも影響しているようです。
そのセカンドハウス、ロンドンの自宅、ショップ、休日を過ごす場所、友人たちの家を取材陣と共に訪れ、心地よいインテリアが紹介されますが、いずれも古い建物の内装を自分たちの手で改装したものです。いろいろな時代のものを混在させつつ違和感無くすっきりとまとまって落ち着いていることや、十分な採光が考慮されている点などが、彼女のお気に入りのポイント。新しいけれど過密で狭小、流行の移り変わりの激しい日本では、到底真似のできないセンスですね。
モダンという概念も、無機質なシャープさやスタイリッシュを指すのでなく、あくまで合理性や機能性から生れた温かみのあるデザインと言えます。今や世界中のインテリアが紹介し尽くされた感がありましたが、私は本書のコラムで、新たにブリティッシュ・デザインへの扉を開いたように思います。メイド・イン・イタリーのような華やかさや遊び心、フランス製の明るく小粋な感じからは遠いし、もちろんドイツの質実剛健な機能美でもない。米国のミッドセンチュリーものをもう少し素朴に、北欧デザインの温もりをもう少し素気なくしたような絶妙な味わいを放つモダン・ブリティッシュ。そういえば英国は伝統と革新の国。彼女自身が評する「クラシカルだけどモダン」という表現がまさにぴったりです。