人種のサラダホールであるニューヨークには、その多種多様な市民が信心する宗教も多様であり、仏教も日本のみならずアジア全体から布教活動が展開している。そして、著者は渡米して20年を超える浄土真宗のお坊さんがブログが公表したマンハッタンでの布教活等を日本の宗教状況を対比させて描いている。
評者の幼年期に祖父母に連れられて近くのお寺の仏事を何度も体験したものには、日本の宗教の衰退と新興宗教の異常繁殖は、宗教という名の営利活動や他の目的が裏に隠されているようで、不気味ですらある。
その一方で、アメリカでは宗教をもたない人は社会的信用が低いし、インテリほど信心を別にしても名目上であれ、信徒でない人は異端視される奇妙な社会でもある。
こうした戦後60年の宗教環境の違いを精確に踏まえながら、日々のマンハッタンでの仏教寺院で僧職を営む意義を淡々と描き出している。それ自体が、葬式宗教に堕した日本の現状と日常生活自体に宗教的なマナーやエティケットが染み込んだ社会との対比で、異文化理解をも助ける。社会を宗教活動で比べるのも文化人類学者のように興味深い。