21世紀に蘇るべきして蘇った小林多喜二。映画になり、歌になり、今度は『蟹工船』がマンガになった。人間の生と尊厳を熱く語り続けた多喜二。『マンガ蟹工船』には、人間の生と尊厳を踏みにじり、金儲けのためには人間を物以下にしか扱わない資本主義の本質が生々しく描かれている。
もっとも優れていると思われるのは、雑多の集団だった労働者が、ひとつのまとまった集団へと変化していく様を巧みに描いているところだ。命さえ脅かされながらも様々な「ごまかし」に惑わされ、なかなか団結できない労働者。その労働者が目覚めていく過程を、一本道として描くのではなく、いくつものジグザグな進展・後退を繰り返しながらまとまっていくところを巧みに描いている。
多喜二が描こうとした資本主義の本質、その本質は現代にも当てはまる。ますます巧妙になった現代のごまかしの本質を、この『マンガ蟹工船』を読むだけでも考えることができる。浅川監督のような直接的な暴力は無くなってはいても(現実には少数ながら存在することを見逃してはならない)、過労死や精神疾患の増加などに見られるように労働者の命さえ削り取っていく搾取はいまなお続けられている。
この『マンガ蟹工船』を、現代の問題として読み取って欲しいと願わずにはいられない。『マンガ蟹工船』を現在の問題として読めば、多喜二文学がいまもなお読み継がれる理由がおのずと明らかになるだろう。
この『マンガ蟹工船』には、マンガでは異例とも言える長文の「解説」が島村輝氏によって書かれている。この「解説」が、小説『蟹工船』への良き導きとして優れている。「ことばの仕掛け」の読み解き、小説『蟹工船』を読むことが楽しくなるような内容に満ちている。
多喜二の作品の魅力はなんと言っても、生とその尊厳への慈しみ、それを踏みにじるものに対する怒りを全身で語ったことではないだろうか。多喜二が多喜二自身の心からの叫びとして「語られた」作品は強く読者の心に響いてくる。
現代にも通用する多喜二の魅力が溢れる『マンガ蟹工船』、これはオススメだ。