本書は前書きによると、大阪大学21世紀COEプログラムのプロジェクト成果の一環として刊行されたようである。マンガをめぐっては、さまざまな論考がこれまでにも成されているが、研究者による学際的に行われたものは珍しい部類にはいるのではないだろうか。
とはいいつつも、執筆者を見ると言語学専門の人がいる他は、文化研究やメディア研究といったマンガ研究についておなじみの人種の人たちなので、そこまで学際的であるインパクトはない。また、言語学の人も、すでに役割語の本で売れている人なので、新鮮味は少ない。
また、本書は、「執筆者が個々ばらばらに日本マンガの中の〈他者〉を論じても、一冊の本としてまとまりがとれない」ので、日本人から見た「異国人」と外国人から見た「日本人を」とりあつかうとのことである。
マンガの中で外国人がどのように表象されているかといういうことは、確かにおもしろいことだと思うが、それを〈他者〉として囲いこむことの意味がわからなかった。外国人の表象を見るのではなく、〈他者〉として囲うことで何か有益な成果が得られる見込みがあるかというと、謎な気がする。また、いわゆる現代思想や哲学などで言われる〈他者〉に違った視点をもたらすかと言えば、謎である。
さらにいえば、「マンガの中の〈他者〉」という共通の軸があるといっても、結局はそれぞれの論考につながりがあるようには思えなかった。
そのようなことから、あまり楽しんでは読めなかったが、このような学際的研究はこれからの研究のキーとなってくるものであると思われるので、もっと広範なジャンルの研究者が集まって広い議論が交わされることを期待したい。さらに欲を言えば、せっかく「ポップ」カルチャーを扱っているのだから、たとえ研究であっても、研究のための研究、マンガを読むことの楽しみやおもしろさを切り捨てるような、論考は勘弁して欲しい。