本書は、1937年に生れトヨタ自動車に入社し、大宇自動車顧問にもなった若松義人の監修のもと、1961年生まれの刺青画を中心とした漫画家摩周子が、トヨタ式カイゼンについて分かりやすく描いた2007年刊行のビジネス漫画を改訂・文庫化した本である。それは第一に、自分の仕事に必要な能力を視覚化し、それに照らして自己の現状、課題達成に必要な能力、その成長速度を具体化し、仕事のやりがいを見出す方法であり、第二に、職場の物心両面の無駄を省くための5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を実践し、標準作業化、現地現物主義、山崩し、壁崩し(多工程持ち多能工化)を通じて、絶えず効率的運営を図っていく方法であり、第三に、顧客重視のために全体最適を考え、後工程が何をどれだけ必要としているかを、前工程にわかりやすくカンバンで視覚化し、在庫ゼロを目指す方法であり、第四に、トラブルへの対応の際、個人のミスを組織の問題としてとらえ、素早い対処の上で、最低5回のなぜを繰り返して対策を考える方法であり、第五に人間の知恵によって、絶えず変化する状況に対応してゆく方法である。本書は以上のようなトヨタ式経営のエッセンスを、具体的な形で平易に提示しており、なかなか読みごたえがある。ただし、「トヨタ式の本質を理解せず、表面的な形式だけをマネした企業が、現場の人間にしわ寄せを強いてしまった失敗例」(53頁)も現実には存在し、おそらくはトヨタ自動車自体もやはり多かれ少なかれそうした問題を抱えているであろうことは、忘れられるべきではない。本書は非常に私には有益であったけれども、経営効率以外のカイゼン点にも、今後は目配りしていく必要があるだろう。