誰にもある美しい「初恋」の記憶。しかし戦争が介在することによって、美しいだけの物語には終わらない。
社交的でない為に一種謎めいた町一番の美女に、性の目覚めと共に魅かれてゆく一人の少年。
時代に踏み躙られてゆく彼女をどうすることもできず、ひたすら見詰めるだけの初恋は、少年に一生残る記憶。
初恋の女性の流転を描くことで、戦争によって剥き出しになる人間の醜さを炙り出した佳作。
まず、他のレビューでラストシーンを「救い」とされている方がいるのに驚いた。
私は、あれこそ「赦してやる」という傲慢さを秘めた、町の人々の残酷さだと思ったのだが。
己の行いは恥じず、かつて追放した女性を夫が伴ってきたという事は「悔い改めた」のであろうから、
こちらも受け入れてやろう、なんて自分達は寛大なんだろう、という尊大さ。鈍感さ。
その上で「だからあの暴力もなかったことにしましょう、お互い様」という無神経さすら感じる。
「戦時だったから仕方がなかった」という言葉は、どの国でも聞かれるものだ。
そしてそう発言する人は、反省した訳ではない。同じ状況になったら、また同じことをするのだろう。
少年が発言権ある一人前の男性であったら、果たして村八分覚悟で彼女を守っただろうか。
またその際、他の男たちのように、保護の代償に彼女に関係を迫らなかっただろうか。
少年は無力だった。だからこそ彼女への「無償の愛」として、彼女の真実を夫に伝えた。
少年が初恋を振り返るこの作品では、少年が周囲の大人たちとは一線を画した人間になったかは描かれていない。
つまり、戦時においても人間らしさを貫けるかどうかは、とても度し難いことであり、
「悪者」として描かれている町人の中に、観ている貴方の姿はないか?という事を問いかけた作品であると思う。