アイヌ音楽は素朴なメロディーが繰り返させる形で歌われるが二重、三重、四重となって輪唱(ウコーク)として歌われると大きなエネルギーとなって聴き手を圧倒してくる。そしてその素朴なメロディーの数々はなんと美しいことか。アイヌの音楽・文化は自然に対する深い敬愛から生まれていて、自然そのものであり、自然の中で聴かれること・・・風や木々の葉がこすれあう音や、鳥の声、川のせせらぎ等全ての自然の音を感じながら聴くことに喜びを感じるのだ。かつてのアイヌの人々もそのような環境の中で集い、ウコークを楽しんでいたことだろう。この輝かしいいとなみをあまりにも残酷な出来事の数々が全てを壊してしまった。アイヌ語で歌われているこの作品ではアイヌ語の響きの美しさから、何か暖かい暖炉の周りにいるよな心地よさが感じられる。マレウレウはなんて素晴らしいグループなんだろう。アイヌ文化の存続が危ぶまれている現代にこのグループの登場は大きな意味を持つと思う。彼女達(マレウレウは女性4名のグループ)はアイヌ古式舞踊等伝統的なアイヌ文化全般に取り組んでいて、貴重なアイヌ文化を伝える伝道師としてこれからの活躍が期待される。本来アイヌ文化は”音楽”とか”美術”のように固定的で狭い世界に収まらないきわめてスケールが大きい文化だ。そしてその大きさは私たちを圧倒するだけではなく、深く包み込んでくれるおおらかな優しさを持つのだ。アイヌ文化が世界的にも優れた文化のひとつであることは間違いないであろう。優れているとは、自然を崇拝する誇り高い精神性を持つ文化である事、独自の美しい響きの言語を持つ事、アイヌ文様に見れる高度な芸術性・美的意識、数々の生活の知恵、ウポポをはじめとした豊かな音楽の数々、民族文化ユーカラの存在、そして優雅でおおらかな民族性等である。日本の国の中にこのように優れ、世界に誇れる文化があり、民族がいることを日本に住む人々は誇りに思うべきだ。日常の雑然とした感性から身をはなし、純粋な心でアイヌ文化を見るならば誰にでもこの文化の素晴らしさが理解できると思う。そこには人間として本来あるべき姿、そして本当は誰もがそうありたいと願う姿があるのではないかと思う。このCDを聴いたならば全く着色のない生粋な音の美しさと響きを感じることができるはずだ。