本書は、英語圏に属する文学研究者によるハイデガーの入門書である。著者が文学研究者だけあって紙幅の多くは、ハイデガーの言語論や芸術論、文学論(ヘルダリン解釈)に、つまり後期ハイデガー思想に費やされる。ハイデガーの入門書と言えば『存在と時間』に焦点を絞ったものが多いことを考えると、本書のユニークさも理解されるだろう。
記述は平明で、訳文も極めて明晰だ。日本のハイデガー研究に馴染んでいる者の目からすれば、<深み>が足りないように思われるかもしれないが、文学専攻の学生を対象にした入門書として致し方なかろう。
また、英語圏の代表的なハイデガー研究にも多くの言及があり、英語圏におけるハイデガー研究の入門書としても本書は役に立つ。
様々な点でお勧めできる良書だ。