著者は上智大学でスペイン語を学んだ後、会社勤めをしながら中近東の文学を翻訳研究している人物です。
書名に「学習法」とありますが、読了後に私が抱いた感想は、これは多言語学習のための手引書とは言えないなというものです。
「外国語学習法」として読めるのは、第一章「日本人は『文法』から逃げてはいけない」と第二章「言語習得における『読書』の重要性」の2つだけかもしれません。
この二か所に書かれている内容(文法と読書の重要性)は、私自身の経験に照らしても文句なくお奨めできるものです。
しかし本書の後半3分の2は、「多言語を身につけようとする時には同じ語族に属する言語なら比較的容易に身につけられる」という世間の思い込みを、自らの多言語学習体験に照らして反証する言語エッセイ、といった趣です。
特に著者が引き合いに出すのは、学生時代に力を入れて学んだスペイン語とラテン系の言語(イタリア語やフランス語やカタルーニャ語など)と、現在専門とするトルコ語とその系統の言語です。それぞれが、語彙や文法のレベルで、いかに類推を許さない言語であるかを実例とともに紹介しています。
本書は英語以外の外国語を複数学んだ経験のある読者、しかもある程度の言語学的知識を持つ人ならば楽しく読めるかもしれません。私自身は大変興味深く読みました。
しかし、英語以外の外国語にこれからひとつ挑戦してみようかな、という段階の読者には内容はかなり専門的すぎるのではないでしょうか。
*「喧々諤々(けんけんがくがく)の議論」(196頁)とありますが、前後関係から「正しいと思うことを堂々と主張するさま。また、盛んに議論するさま」を言いたいようなので「侃々諤々(かんかんがくがく)」の誤りでしょう。
*「ミッシング・リング」(224頁)とありますが、正しくは「ミッシング・リンク」。「ring」ではなくて「link」ですから。