マルクスの名前や共産党という響きは、どうしても暴力革命を連想させます。社会主義国家建設という20世紀の壮大な実験は失敗しました。従来通りの革命運動を繰り返そうという人は、もうどこにもいないでしょう。でも、だからといって、資本主義が正しかった、ということにはなりません。世界の富の配分は相変わらず極端にかたよっています。世界は勝ち組と負け組にわかれ、その修復は不可能のように見えます。負け組みとなった人たちの悲惨な状況は、ご承知の通りです。それでは勝ち組となった人たちは幸福なのかというと、必ずしもそうではなさそうです。資本主義社会で生き残るためには勝ちつづけなければなりません。利潤追求こそが生命線です。自然環境に狂いが生じていることは明らかですが、こんな!問題にかまけて負け組になったら取り返しがつきません。資本主義の超大国アメリカが<京都議定書>を嫌うのは当然過ぎることです。ーーわが亡きあとに洪水はきたれ。
21世紀こそ本当の意味で資本主義体制の是非が問われる世紀です。これまでのところ資本主義に修正を加えながらなんとかやってこられましたが、今後更に飛躍的に膨張するだろう経済活動を思うとき、従来どおりの修正だけで、本当に21世紀が乗り切れるのでしょうか? 一度死んだはずのマルクスが復活する理由が、ここにあります。資本主義体制を彼ほどラディカルに(根源的かつ徹底的に)分析した人はいないからです。
「共産党宣言」も歴史的な産物ですから、アラ捜しすることは容易です。それでも巨視的に見れば、マルクスの考察は今も妥当だと思います。ーー自分の昔を振り返ってみて、マルクスを理解するための最大の障害は、偏見、です。でも、この偏見さえ取り除けば、どなたでもマルクスが非人間的どころかとてもヒューマンな思想家であることを納得されると思います。