少女時代の流転生活、政略結婚による「売られた花嫁」、お相手は敵で「鬼」、父より一つ年下、突然訪れた新婚初夜、夫は優しく有能、家庭は円満だが、夫の没落で、人生が一変、島流しにあった夫に付いて行くか、実家に戻るか、可愛い一人息子の不安な将来、ファザコン気味で、頼れる男性が必要な自分の性格からくる夫への裏切り、一国一城の女主人としての第二の出発、時代の流れには、名門といえども勝てない民衆パワーを実感しつつ迎えた晩年…。
ナポレオンの妻といえば、ジョセフィーヌの華やかさの陰に埋もれてしまいがちな、ハプスブルク家の皇女マリー・ルイーゼの生涯を、丹念につづった本書、激動するヨーロッパにあって、妻、母、女、そして統治者としての苦悩や喜びが、生き生きと伝わってくるような文書が、大変良かったと思います。
マリー・ルイーズ自身の心情や言動を、その時々の世界史的な事件や、さまざまな人物を通じて考察してゆくのは、読んでいて面白く、前半は、夫のナポレオン、後半は、長男のローマ王ことライヒシュタット公に焦点があてられており、特にライヒシュタット公の生涯は、その悲劇性もあって、芝居を見ているようなドラマ性があります。
戦争に明け暮れたヨーロッパに平和をもたらした存在として、マリー・ルイーズはもちろんのこと、保守反動の象徴のようなメテル二ッヒの功績を、高く評価している点は、興味深いものがありました。
ただ、巻末に地図以外の図版がなく、登場人物の写真などがないのが残念に思われました。