中野京子さんの訳が非常に素晴らしいゆえに、繊細さを失うことなく
作品の持ち味をさらに発揮させ、作品に「たくましい生命力」と「情熱」を
注ぎ込んでいる。上巻を読んでいる途中から、下巻が待ち遠しくなる作品で
あるといえよう。特に上巻の最後にはフェルゼンの描写が非常に美しく、
巧みに描写されているために下巻に対する期待はさらに増す。
フランスに告発され、オーストリアには無視された彼女を
最後まで見捨てなかったフェルゼンの姿とアントワネットとフェルゼン、
お互いに思いあうこの二人に対して感動の涙を流さずにはいられない。
そして、上巻では浪費家で自由奔放な女として描かれていたアントワネットが下巻では
夫ルイ16世に尊敬の気持ちすら抱き、分別と理性のある女性となっていたことには
注目しなければならない。これは母となったことのみならず、
真実の愛を知ったからだと解釈できる。
フェルゼンとアントワネットの愛の深さを知るのみならず、
浪費家だと思われるアントワネットという女性の見方も変わる作品である。