ツヴァイク、カストロ、池田理代子とすでに大著が出揃っているアントワネット伝ですが、フレイザーの作品も読み応えがあって、アントワネットファンにはお勧めです。特に、キルスティン・ダンスト主演の映画の原案だというから、もっと軽いタッチの小説だと思ったけれど、これはまじめな研究報告書という感じです。
奇をてらわず、かつ、目新しい事実も丁寧に書き込まれているところに好感が持てます。
特徴としては、賢母のイメージの強いマリア・テレジアを、結構自分勝手な女政治家として辛らつに描いているところです。アントワネットを書く前に、マリア・テレジアの政治実績や書簡なども丹念に調べ上げ、人物設計したことがよくわかります。
アントワネットが夫を、オーストリアを、フェルセンをどう見ていたか。これまでのツヴァイク史観だけではなく、政治的観点から見たアントワネットを捉えることができます。
また、文中の脚注が、そのページ末(か、次のページ)に挿入されているのも親切でした。ほかの文庫だと、巻末と行ったりきたりしなくてはならないのですが、読み手のペースを考えた組版だと思います。