ガブリエル・バンサンの著書と初めて出会ったのは話題の処女作『アンジュール ある犬の物語』でした。嗚呼、何て著者のデッサンは複雑な描写でもなく柔らかなどちらかと言うと線の少ないデッサンなのにこんなにも物語るものがあるのだろうか…そして言葉数が少なくとも、それ以上に与えられるものがあるのです。バンサンさんの自在な線が描く世界は何て美しいのか、まるで描かれたもの全てが動き出してしまうのではないかと思ってしまうのです。此方の『マリオネット』も同様に、ひとつの言葉も用いずに確かなそしてシンプルなデッサンで物語っています。特に子どもの表情が素晴らしい。何処か、また小天使にも似た子どもの表情。泣き笑い、驚き、興味津々とマリオネットを覗き込むその表情は正に生きている子どもそのものの表情なのです。敢えて余白や単調かつ無駄のない描線で仕上げることで、ストーリーや会話を想像する楽しさがあります。バンサンさんの作品に触れる度に、大切な何かを思い出し少しだけ童心に戻ったような懐かしい響きが心の中に温かと広がっていくようなそんな気持ちにさせられます。素敵な絵本をまたありがとうございます。