冒頭で、医者が「自閉症は病気ではなく障害です」なぁんて正しいことを言う。しかも「自閉症児は意志の疎通が図れない」「だから家族が疲れます」と正確なことを言う。ちゃんと解った監督が作った映画です。だから、『治る』物語ではなく、『克服する』物語が展開します。ここがこの映画のポイント。泣かせようというのがミエミエ、偽善=ウソっぽい美談で固めたお涙頂戴の映画になっていないのがいい。
主軸となるのは、母子の物語。というか、むしろ主人公は、この母親なのかもしれない。母親は、息子より1日後に逝くのが願い。しかし、その想いが息子を過保護にしたり、必要以上に物事を強いたり...。長男に付きっきりなあまり、夫とは別居、次男もグレて、さらに自分は胃に穿孔ができて倒れてしまう...。と苦労尽くめだが、シンプルな語り口の中に、チョウォンの純粋さが生み出す笑えるシーンが挟み込まれます。それがまた逆に、切なく胸をしめつける。
個人的には、物語の中後半、監督と併走し、走り終えてうまく話せない主人公が監督の手をとって、自分の胸の鼓動を感じさせるシーンはジーンときた。言葉の要らない美しいシーンだ。あと、シマウマを象徴とするファンタジーシーンの挿入も生きているし、伏線というほど大げさではないけど、母親も、コーチも、家族も、そして自閉症児本人も、皆が自ら折り合い克服し、ちゃんと収まるのもナットク。