本書はイスラム史という日本では割とマイナーな分野における研究者の研究成果を本に纏めたものである。
しかし、この本は佐藤次高氏という人物の筆力の凄さを物語っている。
イスラム史に関する色々な本を読んだが、難しいことを一般人に分からない難しい言葉で書くことは誰でもできる。
しかし、佐藤氏は一流のイスラム史研究者でありながら、その成果を一般人に抵抗無く読ませるという稀有な筆力を持った存在だった。
この本は、佐藤氏の初期の研究分野だったマムルークに関するものだが、前知識の無い人が読んでも、歴史に興味さえあれば、最後まで読ませる筆力に驚かされたのを覚えている。
彼の書いた本には、歴史研究を愛好する人間を引き寄せる力があると思う。
今年亡くなられとのことだが、実に惜しい人物を失った。
マムルークという言葉を知らなくても、この本を読んでいただければ、興味を引かずにはいられない。
この本でも他の著作でも、とにかく一冊読んで、佐藤氏の筆致を気に入られたなら、他の著作も読むことで、イスラム史に関する知識を飛躍的に広げられるだろう。