野手に必要なのは長打率と出塁率。四球とヒットは同価値である。シングルヒットは投手の責任ではないetc。そういった理論で他球団が見向きもしない選手を安く仕入れて、優勝を争うチームに仕上げる。そして、活躍した選手を高く売り、その資金で選手を仕入れ再び優勝を争うチームに仕上げる。貧乏球団アスレチックスのGMビリー・ビーンの哲学である。そんな彼が率いるアスレチックスの費用対効果は素晴らしい。
この作品に書いてあるのだが、野球選手の本当の実力を、誰もが知っている打率や打点だけでは評価しない、という試みは野球関係者以外の間では以前からあったそうである。最も野球関係者は相手にしなかったのだが…。
ビリー・ビーンの凄いところは、その方法を採用すると決めた決断もしただけではなく、それを徹底した点である。そこに現れている数値を冷静に判断する彼の行動が、かなり感情的で強引なのがおかしいが、結局のところ彼のこのキャラクターがなければアスレチックスの躍進はなかったであろう。それは、彼の片腕であり、後にドジャースのGMに転身したポール・デポデスタが2年で解雇された姿を見れば明らかだと思う。知性と野性を兼ね備えた男ビリー・ビーン。毀誉褒貶はあるに違いないが凄い男である。
ただ、すべてがアスレチックスのようなチームになった野球が面白いかと言えば、答えはNOであろう。“金満球団“ヤンキースや豪快な空振りをする選手、魔法のような守備を見せる選手は必要である。そういった存在がなければアスレチックスの魅力も輝かない。そして、その逆もいえるのである。
野球。一つの物差しでは測ることの出来ない奥の深いスポーツなのである。