ロック・バンド専門の弁護士、ウォルター(トム・ハンクス)とオーケストラのヴィオラ
奏者、アンナ(シェリー・ロング)は恋人同士。海外出張している世界的指揮者であ
るアンナの元夫、マックス(アレクサンダー・ゴドノフ)の邸で暮らしていた二人だっ
たが、予定より早くマックスが帰国したことで、新しい家探しを余儀なくされる。
ウォルターの友人の不動産屋の仲介で、格安の豪邸を購入した二人だったが、
見かけの立派さとは裏腹に、内装は至るところが老朽化しており、二人は早速、
修繕を始めるのだが…。
80年代後半、プロデュース作品を連発していたスピルバーグ製作によるコメディ。
公式的には、クレジットされていないが、ケーリー・グラントとマーナ・ロイ主演の
”Mr.Blandings Builds His Dream House”(48)のリメイク的作品だ。監督には、
軽いコメディが得意な、俳優出身のリチャード・ベンジャミンが当たっている。
”Money Pit”とは、「金喰い」、「銭失い」の意。
製作当時、スピルバーグがインタビューで漏らしていたように、”Mr.Blandings
Builds His Dream House”に着想を得ているのは確かだろうが、それ以上に、映
画ファンの頭により鮮明に浮かぶのは、バスター・キートンの短編『文化生活一週
間』(20)。実際、本作は、キートン作品(もっと広く、サイレント喜劇と言ってもいい)の
スラップスティックと破壊のカタルシスへの憧れから生まれ、その再現を試みた作
品と言えるのではないだろうか。すでに、『
1941 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]』(79)
で、自身、その世界に挑戦した(そして、興行的、批評的に惨敗した)スピルバーグ
が、再度、ベンジャミン監督に思いを託したという形だ。豪邸が、システマチックに
みるみる崩壊していく様は、可笑しく、そして実に爽快。その崩れつつある邸に翻
弄される若いカップルを演じた、当時の若手コメディアン、コメディエンヌの最高峰
だったハンクスとロングも、素晴らしいリアクション演技(肉体的動き、絶妙な間)を
披露している。佳作とか秀作という形容には適さない作品だが、何だか嫌いにな
れない小品だ。
本DVDは、80年代半ばの作品ではあるが、画質、音質(日本語吹替収録)とも良好。
特典には、7分強のメイキングと予告編が収録されている。