2003年当時、暴力団が闇金融で得た10億円単位のカネをいかに、海外送金して隠し持ったかを扱ったノンフィクション。
こういう題材の場合、警察の視点から「どのように事件が認知され、捜査がどう進み、犯人をどう特定し逮捕したか」というようなストーリーになることが多いと思う。
しかし、本書の特に前半部分では、不正にかかわったクレディ・スイス銀行の金融マンや、暴力団とクレディ・スイスを仲介した人物や、マネー・ロンダリング(資金洗浄)をしようとする暴力団関係者など実際に事件にかかわった人物の視点で書かれている。
「どうして金融機関がマネー・ロンダリングに加担するようになっていったか」や「関係者のその時々の心情はどうであったか」を克明に記述しており、このあたりはなかなか読ませる。
後半は、主に、警察がどのように捜査を進めていき、どのようにして逮捕に至ったか、そして裁判がどのように進行したかが中心。
金融機関がからんで手口が巧妙であったことや、カネや犯人が外国に出て行っていることや、事件に加担し資金をプールしているのが外国の金融機関であることなどから捜査は難航する。国際捜査の困難さを感じ取ることができて興味深い反面、展開が遅いので、けっこうフラストレーションがたまる。
私の場合は、著者の筆の運びが少し淡々としすぎているように感じ、また、後半部分で話の展開が遅く少しうんざりする部分もあったが、全体を通しては、なかなか興味深い本だった。
この事件は少し前の事件だが、私は、マネー・ロンダリングの現状やそれに対する規制、国際捜査の協力体制の現状などについて、今後知識を深めてみたい気になった。