著者は、独立系ベンチャーキャピタリストとして、起業家に対して単に資金提供に留まらず
力強い支援を行って様々な問題の解決に取り組んでベンチャービジネスを育成し、
持続的に高いパフォーマンスを挙げておられます。
また、積み上げてこられた実践を基に、大学院の博士課程で研鑽を深められ、
その論文は日本ベンチャー学会の清成忠男賞を受章(第1回)。 そして、大学院で
ベンチャーマネジメントを学ぶ大学院生を指導されています(青山学院、早稲田、京大)。
この本には、このような実践と研鑽を積み上げてこられた著者だからこその特質が随所に見られます。
【1】網羅性
新たな事業のアイデアを思いつき、それを事業として立ち上げ、軌道に乗せて安定させ、
さらに持続的に発展させていく過程で、様々な問題に直面します。
いかなる事態が生じてもビジネスの成果を上げていくには、想定の範囲を拡大するとともに、
当初の想定を遥かに越える事態が生じた場合の対応について学ぶ必要があります。
その点において、特定のステージやテーマに限定することなく網羅されているこの本は、
自らの問題を考えていく上で有効です。
【2】実践事例
成功であれ、失敗であれ、事例に学ぶことは多いです。
しかし、学ぶべきは事例の「結果」ではなく、その「過程」です。
自分のこととして事例に学ぶのであれば、その結果を評価するのではなく、
その過程から前提条件や意思決定の判断を確認し、なぜその結果に至ったのかを自ら分析し、
どう取り組むべきだったのかを自ら検討することが求められます。
その点において、著者が経験された多くの実践事例が紹介されているこの本は有効です。
【3】原理原則
世の中に罷り通る一般的な通説や常識の多くは、その根拠が不明確であったり、
その前提や背景が考慮されていなかったりするので、普遍的に適応できるとはいえません。
自らのビジネスの課題に取り組むには、根拠のない通説や常識に頼ることなく、
「原理原則」に学び、自らの考えの基本を確立させることが大切です。
その点において、ベンチャーマネジメントに関する一般的な通説に対して、問題提起を行い、
その通説を検証するこの本は有効です。
書籍や講義で学んだ知識を自らの仕事や人生に活かすには、単に知識を増やすばかりでなく、
自分のこととして深く考え抜き、そして行動することが求められます。
この本は、激しく変化する経営環境の中で、リスクを伴いながらも新たな事業創造に取り組む
ベンチャー企業や中小企業の経営者、そして大企業で新規事業に取り組む者が、
“自らの問題集”を作成し、その問いの答えを自ら考え抜くにあたって極めて有効です。
“マネジメント・テキストシリーズ”として出版された「入門書」となっていますが、
「自らの問題を深く考え抜くための実践書」としておススメです。