マーニー教(表記は著者に敬意を表し、マーニーとします)の概説書で先行するものにタルデュー『
マニ教 』(文庫クセジュ)がありますが、本書でも著者が書いているようにややキリスト教世界でのマーニー教の記述に傾いています。
本書の著者はこれまで同じシリーズで『
ゾロアスター教 』や『
アーリア人』を著しているように、東方世界に詳しい研究者。両書を併せて読むと「第四の世界宗教」のそれこそ全世界(といっても旧大陸だけですが)的な展開に触れることができるでしょう。……私はタルデューの著書は途中で挫折しましたが。
本書では八章のうちかなり分量の多い二章をさいて、マーニーその人の生涯と思想に触れています。また、イラン高原から中国に至る東方世界でのマーニー教の発展と滅亡をおいます。
著者によるとマーニー教の特徴は三点。「人工の宗教」「書物中心の宗教」「神話的表象の宗教」であるといいます。また、宗祖の個性がダイレクトに反映された思想であり、当時最高クラスの哲学、神話的な知の総合的な体系であったようです。
さて、本書のあとがきの冒頭(全文丸ごと転載したいくらい!)において、著者は本文の内容をきわめて簡潔、簡明にして過不足なくまとめ上げています。まったく最高のレビューです。著者はこれまでも優れた概説書を著していますが、研究史をまとめ上げる力量に優れていることがこんなことにもあらわれていますね。
ところで、著者が取り上げなかった関連書籍に、ニール『
異端カタリ派』(文庫クセジュ)があります。こちらは、本書とは真っ向逆にカタリ派(または「アルビジョワ派」)はマーニー教そのものであったと熱弁をふるう本。併せて目を通すのも一興です。