マニの人生、マニが読んでいた著作、マニの著作、マニ教の教義、教団などが、ちょうどよい配分でコンパクトにまとめられていて、マニとマニ教の入門書としては、非常にお手ごろな感じがします。宗教の開祖というと、伝説的な伝承がおおいため、また、一般的な歴史書などでは、殆どマニの生涯についての記載がないため、マニの生涯やマニ自身の著作が、意外によく残され、よくわかっていることに驚かされました。
また教義についても、一般の通史では、「キリスト教、ゾロアスター教、仏教の折衷宗教」という簡単な説明で終わってしまっていて、なにかいかがわしさ、いいかげんさだけしか感じられなかったのですが、本人の著作や弟子たちの著作・活動などがよく残り、知られていることから、当初のマニ教に対する不気味さ、うさんくささ、というものが、いつのまにか感じられなくなりました。
ところで、少し難点を挙げるとすれば、著者がフランス人であることから、訳者達は、イラン史は専門外のフランス文学関係者となってしまい、一部訳語が、日本で一般化している訳語とはならない用語があった点と、マニの生涯について、前半生は、出典もきちんと併記されているのですが、生涯の後半については、記載されていない部分が目立った点が、残念といえば、残念な点でした。リプロボートからでている山本由美子著「マニ教とゾロアスター教」と合わせて利用すると、より効果的かど思います。
2012年5月追記:青木健著「マニ教」を読みました。本書は、マニの人生、マニが読んでいた著作、マニの著作、マニ教の教義、教団について記載されており、マニ教全体の歴史的展開や史料解説、研究史など、より全体的な内容については、青木氏の「マニ教」の方が包括的に記載されています。マニ教とその歴史入門としては、青木氏著作が最適、そのうちの一部の内容について若干詳しい内容を求めるとすると、本書となるかと思います。ただし、クセジュ文庫特有の読みづらさは本書にもあります。