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マニエリスム芸術論 (ちくま学芸文庫)
 
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マニエリスム芸術論 (ちくま学芸文庫) [文庫]

若桑 みどり
5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

マニエリスムとは何か。それは危機の時代の文化である。世界調和と秩序の理念が支配した15世紀は、黄金のルネサンスを生み出した。だが、その根本を支えてきたキリスト教的世界像が崩れ、古き中世が解体する16世紀は、秩序と均衡の美学を喪失する。不安と葛藤と矛盾の中で16世紀人は「危機の芸術様式」を創造する。古典主義的価値をもつ美術史により退廃と衰退のレッテルを貼られてきたこの時代の芸術の創造に光を当て、現代におけるマニエリスムの復権を試みた先駆的な書。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

若桑 みどり
1935年、東京生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科専攻科修了。1962~64年、イタリア政府給費留学生としてローマに留学。千葉大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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15 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
この本ではイタリアを中心とするマニエリスム美術の特色やイデーなどが明快に、快調な文
体で語られています。なかでもミケランジェロにマニエリスムの作風が著しいという事実に
は驚かされました。この巨人については知らなさすぎました。
またマニエリスムを支える最も重要な理念がネオ・プラトニズムであったことも説得力溢れ
る筆で描き出されています。私の好きな画家ブロンツィノが極めて重要なマニエリスム画家
だったことにも感慨ひとしおでした。

とにかくルネサンスもマニエリスムもバロックも、ヨーロッパの近世以降の芸術はキリスト
教やネオ・プラトニスムなど宗教哲学の背景なしには語れないことが痛感されます。こうい
うことは学校教科書的知識では実体的に捉えることは難しいでしょう。それにしてもこうし
た気鋭の研究者の著書を読み、図版を眺めていくと、近・現代絵画とは異なる歴史性の重み
を担った豊かな世界に体ごと包まれ、豊沃にされ、高められていくような感慨に誘われます

 
このレビューは参考になりましたか?
12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 マニエリスムという語を初めて聞いたのは昨年フィレンツェに旅行した際、ウフィツイ美術館でパルミジャニーノ(Parmigianino, Girolamo Francesco Mazzola, 1503-1540)の《長い首の聖母》を見た際に上の空で聞いた説明でした。その時は何も分かっていなかったのですが、かすかに「首が不自然に長いという特徴があり、マニエリスム絵画の一つである」といいったような内容を記憶しています。

 この一般的にあまり耳にしない単語が日本の美術史界でも常識のようになった今日この頃ですが、日本で初めて「マニエリスム」を紹介したのが著者、若桑みどり氏であるとのこと。この著書は若桑氏が「マニエリスム」の歴史上の再発見について雑誌上で論じた文章を一冊にまとめられたもの。

 本のなかでは自然の描写よりも精神的な美を尊んだ画家の意識や、「フィグーラ・セルペンティナータ(蛇状形状)」と呼ばれる不自然に曲がった肢体、観念的な宇宙論など、マニエリスト達の特徴が圧倒的な数の例を参照しながら紹介されており、マニエリスムが一つのエポックで在りえたことが論証されています。

 ともすればルネサンスという明るすぎる光に目が眩んで見逃しがちな16世紀絵画の特徴が鋭く洞察に富んだ視点で語られており、若桑氏の慧眼に脱帽するばかり。またこの時代のアンビヴァレントな画家の精神と、宗教改革とこれに対する反宗教改革に揺れる時代背景という共通点が相まって、氏の論の説得力を増しています。

 それにしてもトスカーナ大公としてヴァザーリ(Giorgio Vasari, 1511-1574)といったマニエリスム画家達を保護した、フランチェスコ(Francesco I de' Medici, 1541-1587)とビアンカ(Bianca Cappello, 1543~1587)に纏わる悲話はとてもイタリアの歴史の闇を現しているようでとても興味深い。またそのフランチェスコがヴァザーリとその工房に作らせた、パラッツォ・ヴェッキョのストゥディオーロなどは是非訪れてみたいと思いました。

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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By La dolce Vita トップ50レビュアー
形式:文庫
日本人によって書かれた殆ど唯一のマニエリスムに関する本格的な論述であり、ルネサンスとバロックの狭間に咲いたあだ花のように蔑視されてきた芸術が開花した歴史的背景とその再評価が若桑氏の深い洞察と広範囲に渡る研究によって明らかにされていく。

プラトンによって唱えられた現世における人間の姿、つまり肉体という牢獄に閉じ込められた精神の苦悶とそこから解き放たれる自由への渇望をこの危機の時代にミケランジェロは身を持って体験し、それを自分の作品に具現化させようと試みた。それはもはや現実的な実態とはかけ離れた精神的な実在に迫る表現であり、ルネサンスの物理的に精緻な物差しを使って彼の作品を計り、理解しようとすることは無謀だろう。

更にブロンズィーノに至ってはミケランジェロの三次元的な形態は受け継がれたものの、その精神は寓意によってすり替えられた。彼は自分の作品を病的なまでに寓意で満たし、後の時代の人々が解読不可能になるほどの技巧を凝らせた。一方パルミジャニーノは既成の空間を反故にして見る者の視線から焦点を逸らし、なかば強制的に思考の迂回を図った。

そうした方法がヴァサーリの言うマニエーラ、つまり作品の背後にある作者の思索を感知させる手段として追求されたのがこの時代の芸術だろう。そうした意味で本書はミケランジェロとその時代を画したアーチスト達の作品を理解するうえで非常に有益な示唆を与えてくれる。また後半部に置かれたマニエリスト達の作品の宝庫、フランチェスコ・デイ・メディチのストゥディオーロについての詳述も圧巻だ。
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