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この一般的にあまり耳にしない単語が日本の美術史界でも常識のようになった今日この頃ですが、日本で初めて「マニエリスム」を紹介したのが著者、若桑みどり氏であるとのこと。この著書は若桑氏が「マニエリスム」の歴史上の再発見について雑誌上で論じた文章を一冊にまとめられたもの。
本のなかでは自然の描写よりも精神的な美を尊んだ画家の意識や、「フィグーラ・セルペンティナータ(蛇状形状)」と呼ばれる不自然に曲がった肢体、観念的な宇宙論など、マニエリスト達の特徴が圧倒的な数の例を参照しながら紹介されており、マニエリスムが一つのエポックで在りえたことが論証されています。
ともすればルネサンスという明るすぎる光に目が眩んで見逃しがちな16世紀絵画の特徴が鋭く洞察に富んだ視点で語られており、若桑氏の慧眼に脱帽するばかり。またこの時代のアンビヴァレントな画家の精神と、宗教改革とこれに対する反宗教改革に揺れる時代背景という共通点が相まって、氏の論の説得力を増しています。
それにしてもトスカーナ大公としてヴァザーリ(Giorgio Vasari, 1511-1574)といったマニエリスム画家達を保護した、フランチェスコ(Francesco I de' Medici, 1541-1587)とビアンカ(Bianca Cappello, 1543~1587)に纏わる悲話はとてもイタリアの歴史の闇を現しているようでとても興味深い。またそのフランチェスコがヴァザーリとその工房に作らせた、パラッツォ・ヴェッキョのストゥディオーロなどは是非訪れてみたいと思いました。
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