ファンなら先刻承知の通り、諸星大二郎には『漫画』というカテゴリーを超越した
傑作が数多くある。
長編なら『暗黒神話』、『孔子暗黒伝』、『西遊妖猿伝』、『海神記』。
短編なら『生命の木』、『食事の時間』、『夢見る機械』、『徐福伝説』。
『太公望伝・無面目』や『妖怪ハンター』シリーズ、いや『碁娘伝』も外せない…。
だが、あくまで個人的な見解だが、長編の最高峰はこの『マッドメン』だろう。
呪術世界と文明との競合、人間の原罪と再生など、根源的且つ重厚なテーマを扱いながら、
物語としての完成度が極めて高い。
日本の神話世界の源を、遠く離れたパプア・ニューギニアで見出す驚き。
現実と信じていた文明への懐疑。信仰の原型。
慣習と掟に縛られた世界を脱し、再生へと向かう主人公たち…。
初版当時の衝撃は、現在とは比較にならなかった。
そういえば、かの宮崎駿が『ナウシカ』製作前、好きな漫画として挙げていた。
20年以上前に初めて読み、それからつどつど探し回ったがなかなか手に入らなかった。
これほどの物語を後世に残せないのは罪ではないか…と思っていたのだが、こうして
文庫形式でも出版されているのは嬉しい限りだ。
…ちなみに、個人的な短編の最高傑作は『桃源記』なのだが、これも異論百出に違いない。