心が裂けた男だから寡黙でいいのだが、それにしても台詞の少ない主人公だと誰もが思うはず。胸のうちを顔にあらわすことも、ほとんどない。しかし本作の演出プランは彼のかたわらに一匹の犬を配することで、その人となりをじつに巧く語ってみせる。ワン公に巻かれた布きれの赤はまちがいなくマックスの愛情の色だし、彼らが寄り添って休む一場面だけで観客はキャラクターの真ん中にある感情をしっかりとらえることができるだろう。そして犬以外のものと心を通わそうとしないマックスの姿に見てとれるのは彼の厭世主義である。そのように脇役を通じて主題を浮き彫りにしていった作り手たちの一捻りは本作の個性として評価できるものだ。犬の視線がちゃんとした芝居になっているところも映画の感情となり、さらに幅を広げていてよい。親を知らぬ少年に誕生日を祝う曲を贈るおしつけがましさのない優しさも、そこに含めておこう。
陽光にも砂塵が紛れるHD画。画面は意外とざわつくものの、加速装置全開の暴力にはさみ込まれる緊迫感は減退せず。戦団を追う空撮に鈍い色彩と汚れた鉄の重たい迫力がある。5.1chはリアが活躍せず鳴っているのはフロントのみという印象。台詞は埋もれがち。スコアは膨らみながら拡がりを出してくる。キレ味はなくとも野獣マシンの咆哮にボリューム感があっていい。