通勤帰りの電車の中吊り広告で本書のタイトルを見た途端、まんまとロックオンされて買ってしまった。刊行されて間もないのによく売れているようで、同好の士が多いのだなぁとうれしくなる。
云わずと知れた東宝怪奇映画の傑作『マタンゴ』に材を取った後日譚的小説である。当然ながらマタンゴの正体が最初から割れているので、「謎」で物語を引っ張ることが出来ず、怪奇ムードがないのは致し方ないところだが、尺の都合か映画で語られなかったマタンゴ誕生の秘密に迫っているのが◎。映画で小泉博が演じたヨットのスキッパー役・作田を登場させて原典の世界との継続性をしっかり確保しているのも芸が細かい。総じて「なかなかよく出来てる」と申し上げたい。
昨年末に映画版の原作(というか素材)になったW.H.ホジスンの『夜の声』(創元推理文庫)も目出度く復刊されたことだし、ここは一つ長らく品切れ状態となっている『怪獣文学大全』(河出文庫)も是非復刊させて欲しい。こちらには正真正銘の映画原作と云ってよい福島正実版『マタンゴ』が収録されており、マニア必読の書!