ジャケットの帯は「官能美に満ちた舞台映像」「エヴァ・メイが体当たり」と煽情的で、実際、裸が満載の舞台。
しかし、余計な裸は出てこない。
裸の群像はストレートに頽廃を象徴するし、瞑想曲をバックにしたソロ舞踊での裸は美しく無垢を象徴する。
そして、ソプラノのエヴァ・メイが片乳露出する場面は、ふつうなら肌を許しあった男女の間に流れるような情愛の場面である。男がバカでそうならないのだが、控えめに露出された胸は、それが本来はそうした場面であることを象徴しつつ、決して下品にならない。
見事な演出である。
集中力を削ぐ読み替えは無く、野心的ではあるがシンプルな舞台で、決して音楽の邪魔をしない。
このオペラが描くのは耽美や官能ではなく、泥中に咲く白い蓮の無垢である。
男は蓮を見ずに観念的な白を見ようとし、女はそれを受け止めて白に同化しようとし、蓮の命は尽きる。
この話に余計なケレン味は邪魔なのだ。この公演にはそれが無い。
エヴァ・メイのふくよかな声とクセの無い歌唱は、虚飾の中にあっても失われない清らかさを表現して見事。オーケストラは余計な自己主張をせず、柔らかく舞台を支えて、これまた見事。(指揮のビオッティは収録の3年後にわずか50歳で亡くなっている。残念。)
この名舞台を、この普及価格で手元に置けるのは嬉しい。