映画監督でありドキュメンタリー作家、森達也。メディアや社会問題についての書籍を数多く刊行している彼の最新作は、パーソナリティを務めていたラジオ番組における20組のゲストとのトーク集。『マジョガリガリ』は「『魔女狩り』狩り」の意味。みんながある事柄や人物に対していっせいにバッシングすることを「魔女狩り」とするならば、その「魔女狩り」自体をさらに別の視点から狩ってみることが必要なのではないかと、みんなが一定の方向に向かう流れにゲストと一緒に抵抗してみる。そんな対談の数々が収録されている。
対談の相手は多分野にわたり、ポップな表紙とは裏腹に、語られている内容は現代社会の影ともいうべき問題が多い。短い会話のなかにきらりと光る話が凝縮されていて、20人それぞれとの対話が面白い。茂木健一郎との「クオリアを考える」でのこの世界の多面性について、井筒和幸との「アジアを考える」での在日問題に対する認識、シンガー・Leyonaとの「放送禁止歌を考える」で憂歌団の『おそうじオバチャン』をめぐるエピソード、詩人アーサー・ビナードとの「投票を考える」での核兵器と第五福竜丸の秘話、映画監督・若松孝二との「若者を考える」での連合赤軍に関するくだりが、とくに面白かった。
対談の後記として、それぞれのテーマに関する著者の書き下ろしが収載されているが、ゲストとのトークをきっかけにした、まさに「マジョガリガリ」的視点の論説として興味深い。机上論ではなく、現場主義の鋭い目線でとらえた現状への熱いメッセージとして読みごたえがある。一極集中・付和雷同の世に一石を投ずる、非常に「目からウロコ度」の高い一冊。今日本が抱えているさまざまな問題について、次の思考につながる重要なヒントが記された好著だと思う。