空廼作品にレビューするのはこれで三回目です。
別にアンチなわけでも粘着したいわけでもありません。むしろクリストからの読者です。
その上で述べるのですが。
空廼さんは世界観を語るのが上手くない作家です。
それはクリストのときから感じていましたし、先ごろ完結したモノクローム・ファクターでもそうでした。
作品内の「リアル」の前提となる諸々の設定が、作品内で積み上げられたものではなくて、先行する他の作家さん達が築き上げてきた「テンプレート」や「イメージ」の借用にしか見えないのです。
このマザーキーパーという作品で言いますと、EDENというハイテク都市と、そこからあぶれた者たちのスラムとの軍事的対立を背景にしています。
ところが、それっぽい描写はあるものの、肝心の「EDENとはどんな国家なのか?」「何故EDENとスラムは対立しているのか?」についてはまるで語られません。
双方毛嫌いしているらしい台詞はあります。でもその由来は語られません。対立、しかも軍事的衝突をするくらいなのですから、それ相応の背景が必要なはずです。
スラム側は「EDENがスラムを粛清するから」と言います。でも「何故EDENはそんなことをするのか?」についてはまるで言及なし。
意味も理由も目的もなしに軍事行動をするような軍隊が、内戦状態の発展途上国ならいざ知らず、SF世界の高度な管理都市にあり得るでしょうか?
まるで「対立構造さえあればそのリアリティは必要ない」と言わんばかりの無頓着さです。
これは、「守る」という焦燥感から読者を遠ざける要因にもなっています。
守るモノに対して感情移入できるからこそ読者は守って欲しいと思えるわけですが、そもそも守るもの、ここではEDENが何か読者には漠然とした状態なので、感情移入できるレベルではなく、ただマザーキーパーたちのアクションを眺めている状態になっています。
とても「ヤバイぞ、がんばってくれマザーキーパー!」と応援できるレベルではありません。
また、この無頓着さはマクロな世界観だけではなく、ミクロなキャラクター像にも表れています。
巻末にあるおまけの短編漫画では、サイラスというEDEN裏社会の有力者らしい人物が登場します。
彼は裏社会で闇の賭け闘技場を運営する顔役であり、表ではEDENの軍や、恐らく政府にも顔のきく有力者です。
でも、その力の源泉は語られません。
彼が「どのような地位にあり、何を武器として今の立場にあるのか」はまるで語られず、「裏社会の有力者である」という設定だけが提示されています。
無論、荒廃したサイバーパンク世界ではありふれたキャラクター設定です。
ですが、だからといって作家が自らの口で語ることを放棄して良いことにはなりません。
「テンプレをググれカス」といわんばかりの設定の仕方、描写の仕方は、いかがなものでしょうか?
現状では全ての設定が「〜という作品に出てきた〜のような」レベルに留まっています。そして全てがそれで説明できてしまいます。
パクリとは言いませんが、既視感の塊。
だから「継ぎ接ぎだらけのサイバーパンク」と言ったんです。
結局空廼さんはストーリー漫画家として、イラスト初心者で言うところの「キャラは描きたいが背景は描きたくない」と同じレベルの漫画家さんなのですね。
ですから、作品にそれなりのリアリティとストーリーを求める人たちには、空廼作品そのものがオススメできません。
「キャラの事情や設定やリアリティはどうでも良くて、萌えれればサイコー!」という人だけお読み下さい。