高殿円さんのデビュー作だと思います。現在はなかなか入手困難な文庫です。
歴史冒険活劇的作品だと思います。主人公は両性具有の王子(表向き)で、その秘密を側近の従者にも隠しています。
ストーリーはあの有名な「王子と乞食」をモチーフとしたようです。両性具有の王子とそっくりな少年が入れ替わって、野心を燃やしたり、隣国と手を組んだ有力貴族による王家転覆の陰謀もあります。
歴史的な要素もかなりあります。王家の開祖オリガロッドの伝承や、シングレオ騎士団の成り立ち、後続作品である「遠征王」シリーズはこの作品の過去の時代に当たりますが、作者の中でこの国の物語が早くから形成されていたのが分かります。
基本的に従者(青年侯爵)と王子の恋愛物なのですが、イマイチ従者に素直になれずに「マウリシオのばかー!」と怒鳴っている王子がかわいいです。しかしながら、どうして王子がマウリシオが好きなのかがちょっと分かりにくかったですね。マウリシオもちょっと鈍感すぎるかも…。
あと、この方が上手いと思うのは、大人のサブキャラの恋愛物語が上手いです。この作品にかつて引き裂かれ、結ばれなかった幼なじみの男女がそれぞれ立場を変え、それぞれの思惑で行動しています。愛した女を手に入れられなかった男が思うのは、権力と野心かと思えば…、意外などんでん返しがラスト付近で語られます。次巻と併せてお読み下さい。