今は昔20世紀初めのイギリスの小さな田舎町で最愛の夫亡き後も女主人として気丈に上流宿ペニーフット・ホテルをきりもりし犯罪にも果敢に立ち向かうヒロインのセシリーと彼女を盛り立てる個性的な面々の活躍を描く人気ミステリー・シリーズ第3弾です。今回は長年に渡り村人達がお世話になって来たマクダフ医師が亡くなるという悲しい出来事で幕が開きますが、去る人あれば来る人ありで事件がきっかけになって新たなロマンスが芽生える事となります。
女主人セシリーの粋なはからいでメイドのガーティと恋人イアンの結婚披露宴とバレンタイン舞踏会を同じ日に開催する事になって大忙しの時に、またもや厄介な事件が起きる。何とマクダフ医師の葬儀の途中で棺の中に医師でなく見知らぬ若い男の死体が入っているのが見つかったのだ。しかもペニーフット・ホテルとの関連を疑わせる物証を偶然見つけたセシリーは何としても宿を守る為に頑固一徹の支配人バクスターの反対を振り切り事件調査に乗り出す。
今回の推理は冒頭の魅力的な謎の割にはやや平凡でイマイチの解決でしたが、セシリーが犯人探しの為に取った男顔負けの度胸の据わった偽装劇にはお見事と感心させられます。シリーズの魅力の人間ドラマの方は、地味なメイドのエセルが村の英雄の若者と恋に落ちるめでたい一幕、シェフ・ミシェルの意外にひょうきんな一面、装花係マデラインの魔女度アップ、結婚直前のガーティとイアンのハラハラさせる大喧嘩と今回も大賑わいですが、やはり本書最大のネタはハンサムな新任医師プレストウィックの我らがセシリーへの大胆な急接近でしょう。今も亡夫ジェイムズを愛するセシリーは揺れ動く心にどう決着をつけるのか?バクスターの新医師への反感はもしかしてセシリーへの愛故なのか?果たして彼は本当に良い人なのか?といった多くの疑問を抱えるシリーズの今後が待ち遠しく、次回はミステリー面のリベンジも期待しましょう。