三巻に分冊された指揮者列伝の、これは第二巻。30年前における第一線指揮者のうち、(主に)長老には至っていなかった8人を論じる。アバド、ジュリーニ、レヴァイン、マゼール、メータ、ムーティ、ショルティ、テンシュテット。インタビューが主体で、相手は指揮者本人のほか、多くが業界関係者である。したがって内容が概ね賞賛的となるのはやむを得ない。その中で、マゼールについてやや皮肉な筆致になっているのが大変目立つ。性格的に問題があり大抵の人に嫌われているとどこかで読んだことがある。筆者も不快な印象を持ったのだろうか、と下世話な憶測もしたくなる。
あとがきで訳者も述べているが、本書には裏話や露悪的なエピソードがほぼ皆無である。刺激的な読み物を期待する向きには退屈な本であろう。しかし、芸術家の本質的でない欠点を面白おかしく暴いたところで、その人の芸術を語ることにはならない。扇情的な本が欲しければ日本ではいくらでも手に入る(但し信憑性については疑問が多い)。本書では、各指揮者の音楽、その個性の長所を、ていねいにあぶり出すことを目的としていると思える。このような上品な本こそ、日本の音楽愛好家には「教科書」として必要なのである。
正直なところ、長時間続けて読むと、些か退屈した。しかし同時に、よい本だとも思った。少しずつゆっくり味わうのがよいと思う。