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しかし『マウス』を読み終えてみて思うことは、『マウス』でスピーゲルマンが新たに開いたアウシュヴィッツを漫画で描くという手法も、そうした名作に劣らず、アウシュヴィッツを限りなく忠実に描き出しているのではないかということである。
最も評価すべきは、アウシュヴィッツに関するあるステレオタイプが事実でないことを『マウス』では描けていることである。
漫画にするための最後の父へのインタビューが終わった時、父はスピーゲルマンに「もう疲れたから終わりにしよう、リシュウ」とつぶやく。リシュウはアウシュヴィッツで死んでしまったスピーゲルマンの兄となるはずであった子。ここではアウシュヴィッツを経験した者にとっては、解放されたからといって、ハッピーエンドにはならない、それは記憶に刻まれ決して終わらないということが暗示されている。
あの苦難を経験した後では、アウシュヴィッツが父の全てを支配しているのである。ここにおいて、『シンドラーのリスト』などで繰り返されてきた「解放の喜び」というステレオタイプが、事実とかけ離れていることに気づかされるだろう。アウシュヴィッツ後には真の意味での喜びなどない。あるのは肉体的にも精神的にも刻み込まれた深い傷だけなのだ。
これは、優れたノンフィクションであるのと同時に、非常に優れたコミック作品です。
歴史の教科書を読むよりもずっと多くの真実を知ることができます。
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