コルトレーンのATLANTIC第三作にして、もっとも有名かつポピュラーなレコードの一枚。しかし誤解を恐れずに言わせてもらえば、タイトルナンバーは異様である。異様だが美しさに満ちている。
なにが異様かというと、この演奏の月並みでない不思議な展開。この曲ではテーマが4度演奏される。1回目のあとは、詩人で劇作家で評論家のアミリ・バラカ(リロイ・ジョーンズ)が、「絹の刺繍のような」と評した、マッコイ・タイナーの叙情的なソロが延々と奏でられる。2回目と3回目のあとはコルトレーンのソプラノサックスの出番だが、タイナーの叙情は受け継がれない。注目すべきは 3回目のあとのソロで、まるで鯉が滝をさかのぼるかのように、ひたすらテンションが高くなっていく。ビブラートを使わないトレーンのソロは、これでもかと斬新なフレーズを生み出し続けるし、タイナーのバッキングはトレーンを煽り続け、ちょっとしたトランス状態にまで到達し、このままこのソロが終わらずにずっと続いていて欲しいなあと思ったりもするが、4回目のテーマのあとにやっぱり終わってしまう。嗚呼、それが音楽なのである。
そして次の「EVERYTIME WE SAY GOODBYE」で一息ついたあと、テナーに持ち替えて怒涛の「SUMMERTIME」と「BUT NOT FOR ME」に突入する。この2曲は「シーツ オブ サウンド」全開で息もつかせぬ激演である。
この国内盤最新リマスターはおそらく今までの復刻中最高の音質。紙ジャケはしっかりコーティングされているし、インナースリーブまでキッチリと復元されている。これ以前に出た同内容のCDと買い替えても絶対損はしません。
なお、このレヴューは「マイ・フェイヴァリット・シングス(+2)(紙ジャケット仕様) [Limited Edition] '06年リリース 」に対してのみ書かれたものです。AMAZONの都合により、同内容の異なる仕様のCDにも流用される可能性がありますが、それらには全く関係ありません。