映画館の大きなスクリーンで見なければ本当の映画の楽しさは分からない、という人がいる。それにも一理あろうが、このアルバムの特典盤を見ると、自宅でDVDを見ることにも大きな利点があるといわざるをいえない。本篇の魅力については今更贅言を要しないと思うので、この特典盤の特別の価値をご紹介したい。
まず、その1。インタビューに応じて裏話を聞かせてくれる人々の顔ぶれがすばらしい。映画史に見識あるM・スコセッシ、数々のミュージカルの作曲者として有名なアンドリュー・ロイド・ウェッバーに加えて、作詞を担当したアラン・J・ラーナーの前妻であるナンシー・オルソン・リヴィングストンという人が実に知的な女性で、興味ある話を聞かせてくれる。イライザの父親役を演じたスタンレイ・ハロウェイの子息も話を聞かせてくれるが、オヤジさんとそっくりな話し方がほほえましい。
さて、それらインタビュー出演者のひとり映画評論家のレックス・リードが、この映画の「ささいな欠点」として遠慮がちに上げているのが、この映画ではオードリーの歌のほとんどの部分が吹き替えであるという点である。しかし、オードリーはこの年のアカデミー賞にノミネートすらされなかったのだから、「ささいな欠点」であったのかどうか私には異論がある。それは、この特典盤で紹介されたオードリー自身による「ステキじゃない」の場面を見れば明らかだ。確かに、彼女の声には吹き替え(マーニ・ニクソン)のような滑らかさはないだろう。しかし、彼女の歌は、彼女自身の演技と共に「生きている」のだ。なぜ、このようなフィルムを撮影しながら、それを没にして敢えて吹き替え版を用いたのであろうか。制作者の見識が疑われる。彼女がこのシーンの撮影後吹き替え版を使うと聞かされてセットから帰ってしまった、というエピソードも頷ける。それほど彼女の歌はすばらしい。わずかワンシーンであるが、これを見聞きするだけでもこの特典盤の価値はある。このシーンを見れば、彼女の声で「一晩中踊れたら」を聴きたかったと誰しも思うに違いない。