有名なスタンダード・ナンバーをこれだけ集めてありますので、万人に愛される選曲でしょう。ジャズのテイストの心地よさを集めたような演奏ですから、多くの人に愛されるのもまた頷けます。
ボーナス・トラックの「スウィート・メモリーズ」を聴けばよく分かるでしょうが、原曲のメロディやハーモニーを大切にして、一定の範囲でのアドリブを披露し、決して枠からはみ出すこともせず、リスナーを夢心地にしてくれるという演奏でした。
若い世代の方にとってこのアルバムに収められた曲群はもしかして知らない曲があるのかもしれません。アラ還の世代には感涙物の選曲です。
曲目は書いてありますので省略しますが、原曲の歌手や演奏家名を記しますとドリス・デイ、ライザ・ミネリ、フランク・シナトラ、レイ・チャールズ、ナット・キング・コール、イヴ・モンタン、デューク・エリントン、ビートルズという、綺羅星の如くのアメリカのショー・ビジネスを席巻したビッグ・ネームが揃いました。
懐かしの名曲をジャズで披露する試みは成功でしょう。
どれも質が高く、心地よさが伝わってきました。ピアノ技術も確かですし、その理由はその経歴を読めば分かりました。選曲も良く、演奏も申し分ありません。ピアノのタッチが美しく、その音色もまた味わいがあります。人生のキャリア、音楽の経験、そしてジャズへの深い愛、その全てが演奏に含まれているようです。
ビージー・アデールの「1937年生まれで、大学でピアノと音楽教育を専攻。卒業後はジャズ・バンドで演奏するかたわら音楽教師。その後ナッシュビルで伝説のパフォーマーと共演するセッション・ミュージシャンとして活躍。エヴァー・グリーンの名曲をエレガントなJAZZYで演奏し、技術がありながらも押し付けることのないあたたかい演奏スタイル」という紹介を読むと遅咲きですが、アメリカでも同様の高い評価を受けているピアニストなのです。
一見ジャズ・ピアニストなら誰でも演奏できるような平易さを感じますが、逆にリスナーにストレスを感じさせない心地をもたらすのはかえって大変で、下手な演奏では眞逆の評価となるでしょうから。