「アレクサンダー広場」の著者、アルフレート・デーブリーンが1924年にポーランドへ旅したときの見聞記である。
1924年と言えば、ポーランドがドイツとロシアの支配から脱して独立を果たして6年目、希望そして混乱に満ちていた時期である。「今この国で何が起こっているのか」を見るための旅だった。小気味よい文章で各都市の土地柄や人柄を描き出す一方で、民族と国家の関係について鋭い目を向ける。また、デーブリーンは行く先々でドイツ的なものに触れてほっとする反面、興醒めに思ったりもしている。本屋でドイツ語の書籍を見つけて喜ぶが、よく見るとそれが台頭しつつあったナチスに関わるものだと知り愕然とする。
そしてもう一つ、ユダヤ人としてのルーツを探る旅でもあった。というよりシオニズムへの関心から、ユダヤ人街へ行き、シナゴーグ(ユダヤ教会)でラビ(ユダヤ教の宗教的指導者)の話を聞くことにしたと言ったほうがよさそうだ。ポーランドにおけるユダヤのコミュニティーがナチスによって滅ぼされた現在、当時を偲ばせる貴重な資料だ。