音楽のジャンル分けが出来ないほど多彩な音楽表現をしているジャズ・ピアニスト木住野佳子の2枚目のベスト・アルバムです。2002年9月に発売された『シエスタ』から2008年4月の『FACE』までの合計7枚にのぼる彼女のオリジナル・アルバムから15曲が選ばれて収録してありました。そしてラストにはJR西日本のCM曲(踏切事故防止キャンペーン)の「ネヴァー・ビー・ロング」が収録してありますので、これまでの彼女の音楽活動の歩みや表現の幅広さをリスナーにしっかりと示したアルバムだと言えると思います。
和と洋、クラシックからポップス、ボサノヴァ、ジャズまで、取り上げる曲とアレンジの面白さが彼女の持ち味でしょう。正統派とも言えるクラシックの素養が至る所で聴くことが出来ました。穏やかさは、聴く者を安らぎの世界へといざなってくれました。心地よいコード進行と音の数を少なくしていることにより、透明度が増しています。
彼女のリリシズムあふれる演奏は気分を爽快にさせてくれる「癒し」効果があります。繊細でナイーブな感性を表現したピアノが持ち味です。どの曲を聴いてもそうなのですが、美しく洗練された音で綴られた爽やかな印象を残す演奏の数々でした。
淡い水彩画のような演奏もありますし、華麗なスタイルのピアノも含まれており、それぞれの表現方法の違いは彼女の内面に浮かぶ世界を音楽で描いているようでした。
クラシック・テイストのジャズは、木住野佳子さんの持ち味を最大限に活かしています。10曲目のサティの「3つのジムノペディ第1番」は、爽やかな環境音楽のような印象を残しました。心象風景を鮮やかに提示したように感じました。
13曲目の「紫陽花」は、ノスタルジアの雰囲気を曲想に込めています。物悲しくセンチメンタルな心情と情景を表わしているようです。耽美的な世界を語らせると他の日本のジャズ・ピアニストにはない美しさを感じさせます。予定調和のコード進行がかえって安心感を与えているのかもしれません。
勿論、力強さやリズムの切れ、明るさにあふれる曲もあるわけですが、「優しさ」をピアノでここまで表現できるジャズ・ピアニストは少ないですね。ホテルの夜景の見えるラウンジでこのような曲を聴いたらピッタリですので、「ヒーリング・アルバム」としてもオススメします。