ジャン・リュック・ナンシーによる序文も贅沢であるが、その言葉さえも色褪せてしまうほどブレッソンによる写真の一枚一枚から飛び込んでくるメッセージは大きい。作家、画家、作曲家などの肖像写真が多い。表紙のベケットやサルトル、カミュ、ボーヴォワール、ジャン・ジュネなど作家の写真はいろいろなところで掲載されていることが多くよく見知った写真が多いのであるが、改めてその写真そのものと対すると感動せずにはいれない。また知らない人の写真においても負けずにその写真の物語る声に引き寄せられ、その写真の前で一時立ち止まる。「内なる静寂」という題名通り、写真に撮られた人々の眼は自らの内面に向いているようであり、それゆえにか撮られた人の存在を間近に感じることができ、自らの心も奮い立つ。写真集としては安価な方ではないが、装丁もしっかりしていて、購入するのに躊躇しなかった、そのような一品である。