旅行記,旅行ガイドは数多くあれど,これほど自らの足で,自らの目で見たことだけを紹介したガイドは私は今まで見たことがない.
ポルトガル.名前は知っているし,機会があれば旅行をしてみたいとは思う.だが人工1000万というこの国は,お隣のスペインに比べればマイナーな国だし,「ポルトガルの町」「ポルトガル料理」と言われてもイメージは漠然としたものだ.
京都で小さなポルトガル料理教室を主宰する著者によるエッセイは,旧来の旅行ガイドには見られない視点が満載だ.通常のガイドブックにありがちな著名都市のありきたりな解説はそこそこに,ポルトガル研究家ならではの,市井の視点からの叙述が繰り広げられる.「神が住む」との神話のある大西洋の秘境,アソーレス諸島に,みずから数週間の取材を重ねたくだりは圧巻である.
名も知れぬこの本の著者は,好奇心だけで暇を見つけ,20年にわたりポルトガルを取材したという.「小さな街の物語」と副題がつけられたこの本には,大上段ではない,真のポルトガルの街の姿が綴られている.ひさびさに衝撃を受けた圧巻のガイドブックである.