ポーランド時代の長編第1作目『水の中のナイフ』、フランスで撮られた『反發』『袋小路』の初期作品3本。いずれ劣らぬ大傑作です。
『反發』はカトリーヌ・ドヌーヴを主演に、『袋小路』はドヌーヴの姉のフランソワーズ・ドルレアックを主演に据えています。
どの作品も予算がかかっている様子はなく、セットもシンプルですが、舐めるようにフェチな、しかし洗練され、計算され尽くしたカメラワークが冴え渡り、モノクロームの映像がおそろしくお洒落に映ります。とくに『水の中のナイフ』に見られるシャープな映像センスと即興的にも見える演出のさりげなさは、とても20代の監督が撮ったとは思えないほどの成熟を感じました。
またポランスキーは登場人物の心理描写においても卓越した表現能力を持っていると思うのですが、この3本に共通する感覚といえば崩壊と喪失感でしょうか。
『水の中のナイフ』と『袋小路』では第三者の登場により崩壊していくカップルの関係を、『反發』では自ら生み出した妄想とコンプレックスによって自己を崩壊させていく少女の心理を細やかに描いています。
人間が自ら生み出し、育てる神経症的な恐怖というものは当事者ではない他人から見るとどこか滑稽なところがあるという、シニカルで覚めた視点も面白かったです。ただ、その恐怖がじわじわと見ている側をも侵蝕していくところは何ともいえず怖いのですが。
彼の作品の中ではこの3本と'70年代終わりの『テナント』がとくに好きです。